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特集・ダンス!
 
今号は“ダンス”を大きくクローズアップ!特別企画として、現在様々な見地から精力的に活動を続けているダンサー4名の方に自身のこと、ダンスのことなど改めて振り返って頂きました。


©bozzo
スズキ拓朗 Takuro Suzuki
観れる!観たい!のダンスを創る!
~既視感のある作品なんて観たくない~

振付家・演出家・ダンサー。ダンスカンパニー「チャイロイプリン」主宰。ダンススカンパニー「コンドルズ」所属。「横浜ダンスコレクションEX2010」奨励賞、「トヨタコレオグラフィーアワード2014」ファイナリスト、舞踊批評家協会新人賞。JaDaFo賞。フィリップ・ドゥクフレ客演。若手演出家コンクール最優秀賞、世田谷区芸術アワード飛翔受賞。多摩美術大学演劇舞踊デザイン学、国際文化学園非常勤講師。



     

  コンテンポラリーダンスを知っている人、観に行く人、やっている人というのは、やはり演劇などと比べると少ないらしい。そんな中、僕はいまコンテンポラリーダンスをやっている。大学4年間と卒業後2年間演劇に力を注いでいたのに、いきなりコンテンポラリーダンスをやっている。何故演劇ではなくコンテンポラリーダンスなのかということは実はそこまで重要ではない。簡単に言うと演劇とコンテンポラリーダンスが寄り添ったら面白いことになると感じたから。そう思ってコンテンポラリーダンスを始めて約5年。思うことは、もっと沢山の人に観てもらいたいなぁということ。コンテンポラリーダンスの面白さを知ってもらいたいし、コンテンポラリーダンスで食べていきたいし飲みに行きたい。そして次の世代の人達もコンテンポラリーダンスに興味を持ってもらいたいし、職業にしていってほしい。しかしそれもなかなか難しい。そんなコンテンポラリーダンス広がろうプロジェクト!名付けてCHP!を大前提として書きます。CHPに必要なのは、やはり面白いものをとにかく創り、公演し、それをダンス界のみならず他ジャンルのプレイヤー、お客様に発信していくことです。面白いとは?

  僕はいい意味でダンスとは短い時間で楽しめるパフォーマンスだと思っています。ダンスの公演を観に行って面白いと思うところは、瞬間的に観ている人を楽しませることができ、なんの説明もいらないというところ。それは国籍も年齢も問いません。それって本当にすごいこと。こんな芸能が他にあるのでしょうか?一瞬で共感を得ることのできるダンスは底が知れません。しかしダンスの弱点は、逆に長時間魅せるにはいささか難しいというところ。何故そこにいて、何故動くのかという説明がいらないダンスは、逆にいうと説明することが何もない為に、飽きられてしまう時間が早いのかもしれない。演劇は誰が出てきて、何が目的で、ここはどこで、どうなっていくか…などの展開があるが、ダンスは極端な事を言えば、動くか動かないかの2択しかない。長い時間をかけて魅せるということにむいているのではなく、短い時間で観ているものの心を捉え感動させるのに長けている。そんなダンスだが、やはりお客様に楽しんでもらおうとなると長時間の公演が要求される。1時間〜1時間半は当たり前。15分、20分で面白いものなど少し苦労すれば誰でもそこそこ作れてしまうと僕は思う。しかしそれでは公演にならない。多くの方に観てもらえない。感動してもらえない。やはり1時間を超える時間を提供し、楽しんでもらうことが重要であって、そこで必要になるのが演出、構成力なのです。つまりは演劇的効果や演劇的要素、もっと言えば舞台美術含む総合的な効果です。楽しんでもらうと言ってもいろいろであって「面白かったね」と100人中100人が言うのがコンテンポラリーダンスだとは僕は思えないのです。100人中100人が「何故かはわからなかったけど面白かったね」と言うのがコンテンポラリーダンスだと思うのです。少なくとも僕はそういった作品が好きだし、目指している。何故面白かったのかが説明できる、あるいは既視感のある作品などコンテンポラリーダンスである必要がない。しかし「なんだかよくわからなかったね」と「なんだかよくわからなかったけど面白かったね」とでは天と地程の差があります。エンターテイメントとは直訳で娯楽となりますが、もっと分解して訳すと「間を伸ばす」「間をもたせる」という意味になるそうです。そう、コンテンポラリーダンスは「間をもっと伸ばす」ことが重要なのです。


©福井理文

勿論そう言った演出、構成、美術はこれまでさまざまな団体が形にしています。ダンスシアターを代表するピナバウシュ。日本で無二の人気を誇る「コンドルズ」など。そうなのです。僕が、そして僕らがやるべきだと思っていることはすでに、歴代コンテンポラリーダンスの先輩方がやってきていることなのです。やり尽くしていると言っても過言ではない。そんな中で僕達は何をやるか。何をやりたいか。僕らのやりたいことはやる余地はあるのか?そんなこと気にし始めたらキリがないので、CHPを実現していく為にも、兎にも角にも僕は日々面白い作品を創ろうと思う。ふりだしに戻りました。

  簡単な結論しか導き出せないが、そうなのです。それでいいのです。普段気づかないことに気づくことのできる作品に出逢いたい。既視感ではなく未視感のある作品を!それがこれからのコンテンポラリーダンスに必要なことだと僕は思います。


次回公演
・MITAKA "NEXT" Selection 16th
CHAiroiPLIN 踊る戯曲3『三文オペラ』
日程:2015年10月24日(土)~11月1日(日)
会場:三鷹市芸術文化センター





[artissue FREEPAPER]

artissue No.005
Published:2015/08
2015年8月発行 第5号
 
鈴木ユキオ ダンスとは何か わからないなりにわかろうとするエッセイ
スズキ拓朗 観れる!観たい!のダンスを創る! ~既視感のある作品なんて観たくない~
手塚夏子 「ダンス」の幅、線引き、別の可能性
工藤丈輝 処々雑感


 
「コンテンポラリーBUTOHダンサー」の旅は続く 石本華江
「挑戦心光る異色のパーカッション・パフォーマンス」 立木燁子
反・知性的な日暮里d‐倉庫『出口なし』フェスティバル 芦沢みどり

 
「やっと」 小暮香帆 ダンサー・振付家
「男性中心と創作過程」 黒須育海 ダンサー・振付家