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小暮香帆 ダンサー・振付家  
「やっと」

©Manaho Kaneko

  日々、今日も生きています。今読んでいて頭の中に響くことば、音楽を聴きながら眺める風景、歩くたびに風を切っていくからだの感覚、人と会っている時、ひとりの時。眠る間際に思い出す今日のこと、明日のこと。こうやって考えてみると、まったく同じことをして生きている人は一人もいません。家族やパートナーと一緒に暮らしていても、同じ学校や会社に通っていても、そしてダンサー同士が同じ空間で踊っていても、その人によって見えるもの、聞こえるものの感覚は違います。毎日生きていて、いろいろなことに影響されては経験していくからだは、それ以上でもそれ以下でもない、たったひとつのからだです。たったひとつのからだ。このことを忘れないようにいつも踊っています。

  めまぐるしく情報が飛び交う今の社会は絶えず変化しています。何が正しいのか。どの答えを選び信じるのか。膨大な情報の中で生きる私たちのからだも、刻々と変化し続けます。その変化をどう受け入れて、飲み込んで、消化して、自分の作品を作り世に送り出していくのか。難しいことかもしれないけれど、辿ってみるととてもシンプルなのかもしれません。

  いつでもまっさらな状態から始められること。動きを信じて疑い続けること。更に新しい景色と出会うために旅を続けること。そして何度でも、自分の中で発見を繰り返せる人が、新しい何かを作り出すのではないでしょうか。その人にしかないものとは、その人のペースで進み、作り、活動を続けることそのものなのかなと思います。それに誰かが共感し何か感じてくれれば、集まり繋がっていく、前に進む力になっていきます。

  わたし自身ダンサーとして作品に関わる時、振付家の思想に触れるたび大きな刺激を受けます。触れていていつも思うことは、同じ人はひとりもいない、という当たり前のことです。道をたどるのは自分自身。先は誰にも分からない、自分にも分からない、だから楽しいんです。新しいから進むのではなく、進むから新しくなっていくことを、このからだと繰り返していきたいと思います。そうすればきっと何かに出会える。お金や名誉や人種や言語を越えたもっと大きな何かに。これからもきっと、探し続けます。やっと、始まりました。やっと、ここからです。




小暮香帆 Kaho Kogure
平成元年生まれ。これまで笠井叡など多数振付家作品に出演、国内外のツアーに参加。12年日本女子体育大学卒業後、ソロ活動を開始。第2回セッション・ベスト賞受賞。「横浜ダンスコレクションEX2015 コンペティションⅠ」奨励賞受賞。また映画や映像作品、LIVEに出演。めぐりめぐるものを大切にして踊っている。
http://kogurekaho.com

次回公演
・新作ソロ公演『ミモザ』
2015年11月8日(日)@六本木スーパーデラックス




[artissue FREEPAPER]

artissue No.005
Published:2015/08
2015年8月発行 第5号
 
鈴木ユキオ ダンスとは何か わからないなりにわかろうとするエッセイ
スズキ拓朗 観れる!観たい!のダンスを創る! ~既視感のある作品なんて観たくない~
手塚夏子 「ダンス」の幅、線引き、別の可能性
工藤丈輝 処々雑感


 
「コンテンポラリーBUTOHダンサー」の旅は続く 石本華江
「挑戦心光る異色のパーカッション・パフォーマンス」 立木燁子
反・知性的な日暮里d‐倉庫『出口なし』フェスティバル 芦沢みどり

 
「やっと」 小暮香帆 ダンサー・振付家
「男性中心と創作過程」 黒須育海 ダンサー・振付家