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イ・ジョンイン インタビュー  サムルノリ「三道農楽カラク」上演に向けて
写真ⓒJung Mi Sook, Jeju


    私は躊躇する性格ではありません。比較的簡単に物事を決め、どんどん仕事を進めます。しかし、衝動的に決めているわけではありません。 おそらく今まで生きてきた中で、自分の中に蓄積した考えや感覚が、今私が自然に物事を決めるように方向性を作ってくれたんだと思います。

――現在、韓国とヨーロッパを拠点に活動しているとのことですが、現在に至る活動の変遷はどのようなものだったのでしょうか。

イ・ジョンイン 韓国で舞踊に関する教育課程(学士、修士)を終え、ダンサーとして活動しましたが、主体性に悩んで20代後半へ向かう頃、韓国での活動を一旦終わりにして、新たな環境で経験を積むため、ドイツのベルリンに移動し、初めての海外活動をスタートしました。 ヨーロッパを中心に、多くのクリエーションやコラボレーションを行うとともにハンガリー、ブルガリア等のダンスカンパニーでダンサーとして4年間活動しました。そのような経験を積んで帰国し、その後2年間は、韓国の国立現代舞踊団のダンサーとして活動しました。 2015年結婚後、主人もダンサーなので一緒にオーストリアへ移住して拠点をヨーロッパに移し、今はオーストリアのリンツに住んでいます。リンツにあるダンスセンター「Redsapata-Tanzfabrik」でコラボレーション振付家として活動しながら、様々な個人プロジェクトをやっています。これまでは、ダンサーとして様々なクリエーションに参加していましたが、今現在は、自分の芸術的な方向性をもとに、振付で表現できる様々な方法を見つけ出すことに興味を持っています。新たな実験を試みてそれらの可能性を探索しながら、自分のクリエーションとして、韓国とヨーロッパで活動をしています。

――今現在どのようなコンセプトで活動を行っているのですか。

  ダンサーとして活動していた頃は、身体機能の限界を克服するみたいな、フィジカル面に重点をおいて考えていたし、踊りから出てくる力量を何よりも大事に思っていました。 今も身体に重点をおいてクリエーションをしていますが、以前と比べ身体の動きよりは、身体の認知に目を向け、細部の様々な感覚を拡張した身体性をどのように具体化できるかについて悩んでいます。






――韓国の現代舞踊シーンについて現状をどのようにお考えでしょうか。

  良い舞踊教育の環境のもと、優秀なダンサーが多く輩出され、活動していています。新しい世代の若手振付家たちが少しずつ自分の個性を持った振付の構成で、国内外で精力的に活躍していると思います。積極的な思考と活動力で世界のダンスマーケットで大きく成長し、持続的な韓国現代舞踊の発展につながることを望んでいます。





――「サムルノリ」について、どのように捉えていますか。

  サムルノリは四つの伝統楽器の特色を全部聴ける、とても楽しく感動的な演奏だと思います。カラク(メロディー)のない、リズム楽器だけの演奏ですが、各楽器の特徴がみられ、混ざり合い、長短(リズム)の中で緊張と弛緩が調和され、韓国の情緒である「興」の要素は控えめ」でありながら、爆発的に活躍するような、技巧があるけれども、調和のとれた、柔らかいけれどもとても力強く感じられる楽曲です。サムルノリの「起景結解(始まり・進行・絶頂・終わり)」の展開方式は舞台公演で見られる構成の要素を持ちつつ、一つの「物語」として強く迫ってくるのです。

――今回の作品について、お考えをお聞かせください。

  私は躊躇する性格ではありません。比較的簡単に物事を決め、どんどん仕事を進めます。しかし、衝動的に決めているわけではありません。 おそらく今まで生きてきた中で、自分の中に蓄積した考えや感覚が、今私が自然に物事を決めるように方向性を作ってくれたんだと思います。
今回の作品Noname_Noraは、このようなことを考えながら作品を進めました。ノラ(*ヘンリック・イプセンの戯曲「人形の部屋」に出てくる主人公、後日人形の家と言われる家を去る)が家を出る前は、多くの葛藤や先が見えない未来について考えていなかったと思います。 ただ心を決めた時、自ら歩き出したのです。それはごく自然なことで、彼女はその時、やるべきことをやっただけだと思います。 思考の嵐も、荒波が立った心も、激しく起きた感情の炎も、彼女の中で自然に融和されて消化されて、その扉を開くことができる瞬間を作ってくれたのです。家を離れたノラが幸せだったのかという質問はしたくありません。自らの選択は、自らの可能性を作り出すことで、私たちは、もう少し自分の選択を信じても良いと思います。今回の作品も、そのように、自然な私たちを眺めるようにご覧いただければと思います。





  李貞寅 イ・ジョンイン
韓国とヨーロッパを拠点に活動している韓国の振付家。現在オーストリアに滞在し、「Tanzfabrik–Linz」の常駐振付家及び協業芸術家。2018年デンマーク、ブルガリア等に招聘され、国際共同クリエーションに力を注いでいる。
       
    Lee Jung In Creation ソロ作品
『三道農楽カラク』

<ダンスがみたい!21 「三道農楽カラク」を踊る。 >
参加作品
7月26日(金) 開演19:30(開場は1時間前)
会場:d-倉庫(荒川区東日暮里6-19-7 )
前売り3000円(学生2500円)
当日3500円(学生3000円)
予約・問い合わせ 
d-倉庫
03(5811)5399 月曜定休 18:00~23:00
http://www.d-1986.com/d21/

ダブルビル上演:梁鐘譽『三道農楽カラク』