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公演までの稽古場の風景
公演の独自性とはどのようにして創られていくのでしょうか? その一つの答えとして各団体の稽古のやり方が挙げられるのではないでしょうか。そこで、今回は観客がなかなか知ることができない「稽古」にフォーカスを当て、各団体が念頭に置く公演までの稽古の進め方・その方法について「OM-2」「劇団態変」「範宙遊泳」「温泉ドラゴン」の4団体に執筆していただきました。

公演までの稽古場の風景
温泉ドラゴン 筑波竜一

1976年2月24日生まれ。身長181㎝体重70㎏、特技は殺陣。「劇団・流山児★事務所」を経て2010年4月に「劇団温泉ドラゴン」を旗揚げ。2010年旗揚げ以降全ての作品に参加。所属事務所(株)エビス大黒舎。

「嗚呼、萬朝報」作・原田ゆう演出・シライケイタ

  昔々、温泉ドラゴンと言う劇団がありまして、「彼らもここで稽古をしていたんだよ」とスタジオのスタッフの言葉があり、それを聞いた若い劇団が「温泉ドラゴンってあの伝説の!」なんて事が未来にあるとしたならば、それは嬉しい事だけど、その時、僕らは一体何をしているのだろうか?時間はあっという間に過ぎ去っていき、過去になった瞬間に演劇は終わる。現在があるから未来があって、一瞬があるから永遠がある。言葉じゃ理解出来るけど、そんな事はどうでも良くて、言葉の先に何があるのかを知りたくて温泉ドラゴンの稽古場はあるのだと思う。

  演出のシライケイタ氏に口をすっぱくして言われたことがある。「俺の言葉を越えてくれ。」「竜一、いつになったら解ってくれるんだ。」

 「もう、お前とはやりたくない!」真剣勝負。一瞬でも遅れると稽古場は許してはくれない。

  温泉ドラゴンはいつだって真剣だ。よく笑い、よく話し、そして喧嘩もする。失敗もする。駄目なところもいっぱいある。悪いところは謝るし、ちゃんと挨拶もする。不良中年集団なんて呼ばれる事もある。仲が良いのか悪いのか、メンバー全員家族のような気がする。劇団とはそういうものなのかも知れないし、そうでなければ劇団の面白さは無いのかもしれない。

  2014年、韓国ソウル大学路にて一週間公演。僕たちは海を渡った。その翌年、韓国三都市ツアーを行う。密陽(ミリャン)国際演劇祭で戯曲賞を受賞。受賞した作品は「birth」。

  その時のメンバーは阪本、筑波、いわいのふ、シライの四人。その後、原田が暑苦しい男達の中に入ってきた。温泉ドラゴン、男五人体制が出来上がった訳だ。

  稽古場は四十過ぎのおっさんが開け、コーヒーを入れ、お菓子を大量に並べる。この作業も真剣勝負。コーヒーの入れ方にもこだわりがある。ゲストの若い役者に手伝いますよと言われても、ここは俺たちの現場だから大丈夫、今日も美味しいコーヒー入れるよ。と格好つける。つまりは温泉ドラゴンの稽古は既にここからはじまっているのだ。

  僕は木の匂いが好きだ。それは劇場の匂いであり、稽古場の匂いである。稽古の最初はテーブル稽古。文字通り椅子に座り、本を読み、芝居の中身、関係性、役のイメージ等を話す。座付き作家が二人いる劇団なので、このテーブル稽古の段階でシライ作品、原田作品で二通りの稽古の進め方があるように思う。何もないスタジオにテーブルと椅子を並べるのだが、広く感じていた空間が2日、3日と経っていくと狭く感じてくる。

  その後、立ち稽古に入って行くのだが、まだ、そのときには木の匂いはしていない。二週間程してから、稽古場に仮のセットが作られる。舞台監督の指示のもと劇団員一同、図面とにらめっこ。僕は長いこと演劇に関わっているが、この図面の見方がいまいち解らない。今さら解らないことを言うのも恥ずかしいので片手にインパクトドライバーをしっかり握り、やる気だけはみせる。


  昨日までは何も無かった空間に仮のセットが組まれていく。コーヒーの匂いしかしなかった稽古場が、木の匂いで包まれていく。手作り感満載だが、かなりいい感じの仮セットを毎回作りあげる。当たり前の事だが、作り上げた過去に感動している時間はない。時間はあっという間に過ぎ去るのだ。その事をよく知っているおっさん達に、過去を振り返っている暇はない。温泉ドラゴンの稽古日程は約4週間。その間に週一回の休みが入る。稽古時間は前半が半日稽古で後半が全日稽古になる。後半の稽古時間は14時から21時。前半の稽古は以前は18時から21時だった。昼間働いて、夜稽古にいく小劇場の主流に乗った稽古時間だったが、年を重ねる毎に体力と脳ミソがついていかなくなった。(これは僕個人の事です)最近では前半の稽古も昼からやる事になり、15時から18時の稽古時間に変わった。稽古終了後に役者同士の会話も多くなったと思う。酒場にも行きやすくなった。終電を気にすることなく話せる時間が出来たことは良いことだ。ただ、僕ら温泉ドラゴンは飲みだすと時間がわからなくなる悪い癖がありまして、気づくと終電の時間はなくなり、しょうがねぇべと飲み続け、物凄い二日酔いで目覚めることもたまにあります。

  反省はするけど、後悔はしません。なんのこっちゃ!

  温泉ドラゴンは役者が三人(阪本、筑波、いわいのふ)なので公演ごとにゲストに参加してもらう。芝居好きで腕のある人達。そして、嬉しい事に僕らを愛してくれる。毎回思うけど、ゲストの方達には感謝している。僕らの現場は関わってくれる方全ての無償の愛で成り立っているのだ思います。仮セットが出来ると、皆「ありがとう。お疲れさま。大変だったでしょ。」と労いの言葉をくれる。「いや、いや、当然の事ですよ」と余裕を見せるが、喜んでくれているゲストの顔を見ていると、なんだが劇団が誇らしく思える。昨日の晩飲み過ぎた事は内緒にしておこう。

  稽古場に仮セットが出来ると、ここから三週間目の稽古に入る。稽古日程もあと二週間。

 細かく、細かく、稽古をしていく。

  演出のケイタさんは、細かく繊細に物語を作っていく。そこに大胆さが加わり、温泉ドラゴンの芝居は作られていく。僕の兄貴だ。いわいのふ健はとても頭が良いと思う。演技の選択が早い。自由な役者だ。彼とはよく飲むのだが、芝居の話しになると覚醒する。それまでの駄目なおっさんの話しから一転、芝居のアイディアが言葉として出てくる。稽古場での彼はそのアイディアに自爆する事もあるけども、稽古場が動く瞬間を何度も見てきた。稽古場において役者がやるべき事を年下の彼から何度も教わってきた。

  阪本篤座長は最近、可愛さを身につけた気がする。立ち姿は昔から惚れ惚れする事があったけど、そこにキュートな篤をみせだした。稽古場での彼は寡黙だが言うことは言う。余計な事は言わない。どっしり座長として、稽古場にいる。たまにはコーヒーいれろよと言われても可愛い笑顔で乗り切るのだ。因みに篤は一番年下です。

  その阪本座長と同じ年の原田ゆう。温泉ドラゴンの劇作家であり、ダンスも踊る多才な男である。(原田はイデビアンクルーのメンバーなのです)原田作品の場合、稽古場に毎日来て、我々の質問に答え、時には書きかえていく。あまり多くは語らず、本に書いてある言葉で勝負する男気を原田から感じる。

  頼りになる男達。凄いなと思える奴等が稽古場にいることは温泉ドラゴンの武器であり、ゲストにも誇れるところである。勿論、ポンコツ具合も突き抜けています。

「THA DARK CITY」作・演出 シライケイタ

  三週目の稽古場は新しい出来事を生み出す稽古になる。常に新鮮に大胆に壊していく。役者同士で作りあげられる時間を大切に大切に。この時期は役者同士の会話も一段と増えていく。話す事が山のようにあるのだ。稽古中、喫煙所、飯休憩。私生活も曝け出していく。恥ずかしいなんて言ってる時間はないのです。

  4週目の稽古に入るとミザンス(役者の立ち位置)がつけられていく。そして、通し稽古。通し稽古をしながら、細かく場の稽古もしていく。

  温泉ドラゴンの現場は兎に角、皆、諦めない。そして、挑戦する。僕らの稽古場は特別な事をしている訳ではない。相手と向き合い、芝居をする。観客の事も忘れない。

  僕達は稽古場で出来ることを最大限やるし、劇場に入ってからも諦めない。温泉ドラゴンの稽古場はそれぞれが挑戦する熱気で溢れていて、とても気の抜けない現場である。僕は毎回、温泉ドラゴンの稽古がこわいと思う。一番こわい現場が温泉ドラゴン。その事があるから僕は40過ぎても役者をやれているのだと思う。

  最後に温泉ドラゴンのスローガンを記しておこうと思う。

  「僕らは肉体存在の説得力を信じている。言葉が世界を変える奇跡を信じている。ナチュラルを超えたところにあるリアルを信じている。魂を揺さぶるものはいつも、強く、切なく、そして繊細なものなのだと信じている。」

次回公演
温泉ドラゴン『渡りきらぬ橋』
2019年6月21日(金)〜30日(日)@座・高円寺1
作:原田ゆう 演出:シライケイタ