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身体と空間
岡野暢 身体の景色/演出家・俳優



 空間変容の知覚。呼吸と丹田への意識。床を感じる力。これら微かな身体感覚がゆっくりと消えゆき、等身大の身体が演劇界を席巻し久しい。最近では無感覚な身体を強調し利用し遊び、演劇を破壊する輩まで現れている。呼吸と丹田の関係に、足と床の関係に、空間の変容に静かに集中することで身体と空間が溶け合い、自然と繋がりゆく感覚を日本の俳優はいつから捨ててしまったのだろう。古くから続くその身体感覚(空間感覚)をどのように現代的に捉え直すかは僕らの大切な仕事である。

 建築に例えると建物の基礎部分や柱の構造が「呼吸・丹田、空間の変容を感じる力」にあたり、建物のデザインや壁の模様は「戯曲、解釈、感情、論理」にあたる。基礎部分がなければデザインを置けようはずもないのだけれど、東京の演劇でそれは行われ、感情や論理が虚しく風になびいている。空々しく口惜しい。

 身体と空間が溶け合うドラマと、戯曲のドラマ、双方が同居し折重なり共鳴し合う刹那が好ましい。しかしどうも僕はまだ匙加減が上手くゆかず、身体と空間のドラマに片寄り、「身体の景色」は稀に前衛と呼ばれたりする。戯曲にそぐわない変な動きをしたり、裸になったり唄ったりするからであろう。時に学者には怒られる。戯曲を逸脱していると。どうもすみません。身体と空間に導かれその向こう側のカオス、そのひとしずくを両手にすくえばそこにはなんだって在るので裸くらい何の不思議もないのだけれど、確かに身体と空間のドラマを強調し過ぎ、戯曲を蔑ろにしてきた傾向はある。匙加減を勉強する。

 でも、僕は言いたい。虚しくデザインだけがたなびく、あの景色を放って置いていいのか。感情や論理ばかりが先行し、身体感覚が不要となったその先で、肉体すら消え3Dを駆使した演劇が拍手喝采を浴びる可能性が今ここにある。それが時代だと絶望し諦め受け入れても尚、僕は自然と一体化し越境しゆく生身の身体を信じ続けたい。信じたい余り、勢い余り、身体と空間に導かれるままに、つい変な動きをしたっていいではないか。





岡野暢 Itaru Okano
演出家・鈴木忠志に師事。『ディオニュソス』『リア王』等に出演。14カ国17都市にて公演。00年よりフリー。演出家・原田一樹、関美能留、振付家・竹内登志子等の作品に出演。07年「身体の景色」旗揚げ。以降、構成・演出を手掛ける。12年「密陽演劇祭」(韓国)にて演技賞を受賞。